人が大地と出会うとき

縄文土器 埴輪
宮沢賢治 岡本太郎 イサム・ノグチ
濱田庄司 伊藤慶二 栗木達介 尹煕倉 丹羽康博

2016. 9/10 - 10/23 あいちトリエンナーレ2016 特別連携事業/特別企画展 愛知県陶磁美術館


   宮沢賢治の思想を解釈し、作品との関わりを探る。
   二つの短歌、三つの詩、一つの物語を選び出し、
   それらひとつひとつと新旧の私作品とを合わせることにした。

『untitled』
   2016 インスタレーション


   なつかしき地球はいづこいまははやふせど仰げどありかもわかず (宮沢賢治「歌稿A」159)

『Three minutes breathing』    
   2011- インスタレーション 息、瓶、蝋、油性ペン


   ぼんやりと脳もからだもうす白く消え行くことの近くあるらし (宮沢賢治「歌稿A」165)

『untitled』    
   2016 38×52cm トレーシングペーパーに水彩、他


黒と白との細胞のあらゆる順列をつくり
それをばその細胞がその細胞自身として感じてゐて
それが意識の流れであり
その細胞がまた多くの電子系順列からできてゐるので
畢竟わたくしとはわたくし自身が
わたくしとして感ずる電子系のある系統を云ふものである (宮沢賢治「詩ノート」1018)
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『untitled』    
   2016 38×52cm トレーシングペーパーに水彩、他


   ひとはすでに二千年から
   地面を平らにすることと
   そこを一様夏には青く
   秋には黄いろにすることを
   努力しつゞけて来たのであるが
   何故いまだにわれらの土が
   おのづからなる紺の地平と
   華果とをもたらさぬのであらう
   向ふに青緑ことに沈んで暗いのは
   汚染の象形雲影であり
   高下のしるし窒素の量の過大である   
(宮沢賢治「詩ノート」1084)


『untitled』    
   2014 8×5 cm 石、ワイン


   龍のチャーナタは洞のなかへさして来るあ上げ潮からからだをうねり出した。
   洞の隙間から朝日がきらきら射して来て水底の岩の凹凸をはっきり陰影で浮き出させ、またその岩につくたくさんの赤や白の動物を写し出した。
   チャーナタはうっとりその青くすこし朧ろな水を見た。それから洞のすきまを通して火のやうにきらきら光る海の水と浅黄いろの天末にかゝる火球日天子の座を見た。
   (おれはその幾千由旬の海を自由に漕き、その清い空を絶え絶え息して黒雲を巻きながら翔けれるのだ。それだのにおれはこゝを出て行けない。この洞の外の海に通ずる隙間は辛く外をのぞくことができるに過ぎぬ。)
   (聖龍王、聖龍王。わたくしの罪を許しわたくしの呪をお解きください。)
   チャーナタはかなしくまた洞のなかをふりかへり見た。そのとき日光の柱は水のなかの尾鰭に射して青くまた白くぎらぎら反射した。そのとき龍は洞の外で人の若々しい声が呼ぶのを聴いた。龍は外をのぞいた。
   (敬ふべき老いた龍チャーナタよ。朝日の力をかりてわたしはおまへに許しを乞いに来た。)
   瓔珞をかざり黄金の大刀をはいた一人の立派な青年が外の畳石の青い苔にすはってゐた。…
(宮沢賢治「龍と詩人」より)


Photo.KODERA Katsuhiko
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